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	<title>SYM-MARITAKAHASHI</title>
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		<title>垣根の上にいる女</title>
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		<pubDate>Sun, 13 May 2012 11:06:43 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

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		<description><![CDATA[「まりちゃんのお母さんって、魔女みたいだね。」
その昔、友人のAちゃんといつものように下校して、
ちょうど二人の別れ道で立ち話をしていると、
我が家へ続く急な坂道に、全身黒い衣に身を包んだ
明らかにうちの母の下りて来る姿 [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>「まりちゃんのお母さんって、魔女みたいだね。」<br />
その昔、友人のAちゃんといつものように下校して、<br />
ちょうど二人の別れ道で立ち話をしていると、<br />
我が家へ続く急な坂道に、全身黒い衣に身を包んだ<br />
明らかにうちの母の下りて来る姿が見えた。<br />
その光景を目にし、おそらく無意識に友人はそう呟いた。<br />
私も心の中で、否定できずにいたのだろう。<br />
黙ったまま、その姿をぼんやり眺めていた。<br />
<br />
最近になって、魔女はドイツ語で&#8221;Hexe&#8221;と言い、<br />
「垣根の上にいる女」という意味を持つと知った。<br />
そして、この「垣根」とは、生と死の間の垣根であることも。<br />
<br />
ひょっとしたら母は、本当に魔女だったのかもしれない。<br />
家族にも入り込めない、見えない部分を持っている人だったし、<br />
子供の頃から、なんとなく<br />
「この人は、いつかふいにいなくなってしまうかもしれない。」<br />
と思っていた。<br />
その小さな不安からか、いつもより帰りの遅い母を<br />
長い石段に座り、幼い私が泣きながら待っていた事もあった。<br />
<br />
その魔女が人間を愛し、妻となり、子を産み、<br />
少し風変わりな母親を辛抱強く演じてくれた事を、<br />
大人になり改めて、あたりまえの事ではなかったのだと、思う。<br />
我が家の「家庭」という庭は、外から見ればまとまりがなく、<br />
あまり手入れもされていない素っ気ない庭だったろう。<br />
それでも、その不格好な庭は私たち家族にとって、<br />
たった一つの帰る場所だった。<br />
それはいつまでも消える事がなく、心の奥でいつも<br />
巡る季節の光と風を、浴びている。<br />
<br />
今頃、誰もいなくなったその庭を、母は垣根の上に腰掛けて<br />
いとおしそうに眺めているのだろうか&#8230;。</p>
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		<title>やきいもやさんがとおる</title>
		<link>http://www.maritakahashi.com/essay/589</link>
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		<pubDate>Sun, 12 Feb 2012 11:40:49 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

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		<description><![CDATA[崩れ落ちた本の山の中に、一冊の文集を見つけた。
「まつぼっくり」と書かれた薄桃色の表紙をぱらぱらと捲ると、
そこに私の名があった。

やきいもやさんがとおる　　
　　　　　　　　　　　　　一の三　たかはし　まり
せんせい [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>崩れ落ちた本の山の中に、一冊の文集を見つけた。<br />
「まつぼっくり」と書かれた薄桃色の表紙をぱらぱらと捲ると、<br />
そこに私の名があった。<br />
<br />
やきいもやさんがとおる　　<br />
　　　　　　　　　　　　　一の三　たかはし　まり<br />
せんせい、あのね。<br />
いっつもよるになると、うちのちかくにやきいもやさんがくるから、<br />
とってもたべたくなるんだよ。<br />
それに、おかあさんまで、<br />
「たべたいね。」<br />
というんだよ。<br />
ふたりのおねえちゃんたちまでいうんだよ。<br />
わたしだってたべたいのに。<br />
それに、うちのおとうさんだっていうんだよ。<br />
だから、わたしは、いっつもよるごはんのときこまるんだよ。<br />
きょうは、また、ちかくにやきいもやさん、こないといいなとおもうけど、<br />
やきいもやさん、ちかくまでくるだろうなあ。<br />
せんせいはどうおもう。<br />
<br />
もう二度と、これ以上の文章は書けない。<br />
けれども、この時のわたしを、私は決して失くしてはならない。</p>
]]></content:encoded>
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		<title>4番目の博士</title>
		<link>http://www.maritakahashi.com/essay/570</link>
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		<pubDate>Sun, 25 Dec 2011 01:36:55 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>
		<category><![CDATA[未分類]]></category>

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		<description><![CDATA[その昔、日曜学校のクリスマスミサで神父様が話してくれた
小さな物語を、ふと思い出した。

それは、キリストがお生まれになった時、東方から星に導かれ
贈り物を持ってやって来たという博士の物語で、
三博士として知れ渡っている [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>その昔、日曜学校のクリスマスミサで神父様が話してくれた<br />
小さな物語を、ふと思い出した。<br />
<br />
それは、キリストがお生まれになった時、東方から星に導かれ<br />
贈り物を持ってやって来たという博士の物語で、<br />
三博士として知れ渡っているが、本当は博士は4人いた、<br />
というお話だった。<br />
旅の途中、一人の博士の身の上に何かが起こり、彼はやむなく<br />
一人東方へと引き返した。<br />
その理由を私は忘れてしまったが、とにかく彼がその目で<br />
幼子を見る願いは叶わなかった。<br />
それから30年あまり経った後、博士はようやくあの幼子に<br />
会う事ができる。<br />
その時、救い主としてお生まれになった筈のその御方は<br />
皆の前で十字架に張り付けられ、身体からたくさんの血を<br />
流されていた。<br />
苦しみの内に息を引き取られたキリストに近付くと、<br />
流れる血の川の中に、何か光るものが見えた。<br />
それを拾い上げると、それはキリストの流した涙のような<br />
真紅の宝石であった。<br />
そして、それはまさしくあの時博士が幼子へ渡す事が<br />
できなかった、贈り物そのものであった。<br />
<br />　<br />
この物語を話してくれた神父様は、あまり愛想がなく、<br />
少し近寄り難い雰囲気もあったので、決して子供たちの<br />
人気者ではなかった。<br />
一緒にお喋りしたり遊んで貰った記憶もほとんどないが、<br />
このクリスマスのお話だけはとても印象に残っていて、<br />
その鋭い眼光の奥の遠い記憶をたぐり寄せるような語り口に、<br />
ひょっとしたら神父様こそが、その4番目の博士なのでは‥<br />
と思ってしまう程だった。　　<br />
<br />
教会にきれいに飾られた馬小屋を眺めながら、<br />
そこにはいない4番目の博士のことを、彼の人生のことを<br />
今年は何故か思い巡らせていた。<br />
<br />
Merry Christmas, Mr.Loneliness.</p>
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		<title>草枕</title>
		<link>http://www.maritakahashi.com/essay/552</link>
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		<pubDate>Sun, 27 Nov 2011 13:12:50 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

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		<description><![CDATA[家から駅までの通り道に、四角い座布団のような草はらがある。
半年ほど前に家が取り壊され、そのまま放置された空き地で、
そこだけうっそうとした小さな茂みになっている。
同時にそこは虫たちの集合住宅となっていて、帰路通り掛か [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>家から駅までの通り道に、四角い座布団のような草はらがある。<br />
半年ほど前に家が取り壊され、そのまま放置された空き地で、<br />
そこだけうっそうとした小さな茂みになっている。<br />
同時にそこは虫たちの集合住宅となっていて、帰路通り掛かると<br />
「おかえり、おかえり。」と虫たちの大合唱が迎えてくれる。<br />
月明かりや星々の瞬きが美しい晩には、そこはまさに草枕の舞台<br />
となった。<br />
私はそこを通るほんの数秒のひとときが好きだった。<br />
疲労でくたくたの日も、嫌な事があった日も、そこを通る束の間は<br />
何だかまっさらな気持ちになれた。<br />
ただ美しい歌声に耳を傾け、空を見上げる事ができた。<br />
<br />
とても穏やかな秋の休日だった。<br />
いつものようにその空き地の前を通った時、視界の片隅に一瞬<br />
何かの物影が映った。<br />
私は二三歩引き返し、初めてその前で立ち止まった。<br />
目を凝らして見ると、秋の柔らかな光を浴びて微かに揺れる<br />
草はらの中に、ぽつんと木の椅子が置いてあった。<br />
それは何の装飾も無ければ、目立つ色もしていなかったし、<br />
背丈も伸びきった草木に埋もれてしまう程だったので、注意深く<br />
見なければ誰も気付かないような佇まいだったが、確かに昨日までは<br />
そこになかった。<br />
何故かそれだけは確信が持てた。<br />
一体誰がどんな目的でここに椅子を置いていったのだろう。<br />
テーブルも無く、ただ椅子一脚だけ‥。<br />
謎は深まるばかりだったけれど、そうずっと立ち止まっている訳にもいかず、<br />
私は何となく写真を一枚だけ撮って、その場を去った。<br />
その晩も恐らくその椅子はそこにあって、暗くてその姿はよく見えなかったけれど、<br />
虫の鳴き声と共に確かにその気配を感じた。<br />
でもそこで何か行われたり、誰かが足を踏み入れた形跡はなかった。<br />
翌日のお昼過ぎ頃だろうか。<br />
私は駅に向かってまたその空き地のある通りを歩いていた。<br />
すると、視界の先に目を疑うような光景が入ってきた。<br />
昨日までの四角いふかふかの草はらがすっかり綺麗に刈り取られ、<br />
殺風景な更地になっていたのだ。<br />
椅子の姿形も全く無く、昨日私が目にしたものは、まるで幻のように思えた。<br />
益々そこに一日だけ椅子があったという出来事が、不思議で謎深くなった。<br />
そして、その事実に何故か気付いてしまった私‥。<br />
その小さな衝撃に心がざわめいて、でもきっと他の誰にもわかって<br />
貰えないだろう高揚した気持ちを抱えたまま、私は駅に向かって歩き続けた。<br />
そうして、幼い頃見たある夢のことを思い出していた。<br />
<br />
それはモノクロームの夢で、私は実家の傍の神社にいた。<br />
そこは私の恰好の遊び場であり、庭だった。<br />
ちょうど&#8221;どんと祭&#8221;が行われた後で、境内には細い竹に括り付けた<br />
縄で囲まれた土俵のような仕切りがあり、その中には火を燃やした<br />
黒い痕跡と炭の残香がまだ漂っていた。<br />
私は上着のポケットから、手に握れるだけのビー玉を徐に取り出して<br />
その中に投げ入れた。<br />
飛び出したビー玉は、真っ黒い土俵の上に当たり弾けた。<br />
その瞬間ビー玉だけに色彩が灯り、再びモノクロームの地面に転がった。<br />
それは何かの儀式のようでもあったが、私はただひたすら独りぼっちで<br />
ビー玉を投げ入れては色取りどりに弾けるビー玉を眺めていた。<br />
その夢のことを後日「こんな夢を見たよ。」と私は母に話した。<br />
すると母はいつになくその話に聞き入り、そして真剣な面持ちで<br />
幼い私にこう言った。<br />
「その夢をしっかり憶えておきなさい。これからもずっと忘れないように。」<br />
<br />
もしも、昨日から今日に掛けて私が目にした出来事を、<br />
幼い頃のように話したら、母は大人になった私に今度は何と言うだろう。<br />
きっとあの時と同じ言葉を、私の目を見て言うだろう。<br />
題名も主役もない、もしかしたら誰の目にも触れることのない<br />
小さな物語を、決して忘れまいと私は心に誓った。<br />
時折、光と風をたっぷり含んだ草枕に頭をもたれ、そのページを捲りながら。</p>
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		<title>白旗</title>
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		<pubDate>Mon, 11 Jul 2011 13:00:41 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

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		<description><![CDATA[先日参加した或るファッションショーはモデル一人一人に旗があるショーで、
それから何だか“旗”という存在が気になり出した。
“旗って一体何なのだろう”とか“自分の旗はどんなものだろう”
“そもそも旗って必要？”などと。
シ [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>先日参加した或るファッションショーはモデル一人一人に旗があるショーで、<br />
それから何だか“旗”という存在が気になり出した。<br />
“旗って一体何なのだろう”とか“自分の旗はどんなものだろう”<br />
“そもそも旗って必要？”などと。<br />
ショー後のインタビューでデザイナーさんは<br />
「個人の旗は嫌いではないが、集団としての旗や国の旗はあまり好きではない。」<br />
とおっしゃっていた。<br />
確かにビルやお屋敷、校舎の前に高々と掲げられた旗が頭上で棚引く様は、<br />
とても冷やかに感じる。<br />
旗を揚げる為のロープが風の吹く度金属柱に当たるあの音が苦手だったのも、<br />
その威圧的で温もりを感じさせない存在ゆえだったのかもしれない。<br />
<br />
以前兄が「凄く好きで３冊持っているから、おまえに１冊やる。」<br />
と司馬遼太郎の『殉死』という本をくれた。<br />
半分も行かぬうちに私は挫折してしまったけれど、主人公の乃木将軍は<br />
西南戦争の際連隊旗を敵に奪われ、その自責の念から何度も自殺を図り、<br />
自ら戦死を望むような無茶な戦いを繰り返した。<br />
ただ旗を失ったというだけで。<br />
今となってはなぜ兄があの本を私にくれたのか、あの本の何がそんなに好きだったのか、<br />
その真意は謎だ。<br />
ただ、乃木将軍がそこまで思い入れる旗は、権力と支配の象徴みたいなもの<br />
だったのだろう。<br />
その類いの旗は、私のような人間には必要ない。<br />
けれど、運動会やサーカスで色取り取りの小さいな旗が連なって出迎えてくれると<br />
俄然心躍るし、ケチャップライスの丘に旗のないお子様ランチは、<br />
やはり物足りなさを感じてしまう。<br />
とにかく旗は、平和だったり、幸せだったり、プライドだったり、<br />
何らかの志のぎゅっと詰まった象徴、表明なのだろう。<br />
<br />
では、私に旗があるとしたら、それは一体どんなものだろう。<br />
そのイメージを膨らませてみると、浮かぶのはどうしても白旗なのだ。<br />
しかもシャツやシーツでできた旗。<br />
一風変わったそのショーの時「モデルは各自好きな事をして下さい」と言われ、<br />
私は考えた末、時々シャボン玉を吹きながら洗濯物を干していた。<br />
でも干す行為が好きというよりは、洗濯バサミで留められた洗い立てのシャツやシーツ、<br />
靴下が、日を浴びて風に揺れる様が好きなのだと思う。<br />
私にとってその光景は、白い鳩なんかよりもずっと、<br />
平和のシンボルのように映る。<br />
それがきっと、私にとっての旗なのだ。<br />
<br />
父について姉と「パパの凄いところは、大事なものの為に自分が折れられるところだね。」<br />
と意見が一致した事がある。<br />
音楽好きの両親の影響で、家族６人とも何かしら楽器を習っていたのだが、<br />
家計が苦しくなってきた時真っ先に「俺が一番下手くそだから。」<br />
と言ってチェロをやめたのは、父だった。<br />
振り返ると父の人生は、そういう事の繰り返しだったように思う。<br />
そうしてある意味白旗を振りながら、父は必死で家族を守っていた。<br />
<br />
降伏の白旗。<br />
それは服従とはどこか違う。<br />
それは極限で自ら切り開く道ではなかろうか。<br />
争いをやめ生きてゆくという決意の表明。<br />
<br />
白旗を掲げた家で生まれ育った子の旗は、やはり白旗なのだと思う。<br />
それは決して平坦ではない長い道のりの中で、ほつれたり、シミが付いたりするだろう。<br />
それでも繕い何度も手洗いしながら、風にはためくその旗を、<br />
私は眩しく眺めていたい。</p>
]]></content:encoded>
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		<title>青の時間</title>
		<link>http://www.maritakahashi.com/essay/502</link>
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		<pubDate>Sun, 15 May 2011 13:58:01 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

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		<description><![CDATA[近所の映画館で、ロメールの「レネットとミラベル　四つの冒険」というオムニバスを観た。
主人公は十代の二人の少女。
田舎っ子のレネットと都会っ子のミラベル。
感受性豊かな二人の日常の冒険が、瑞々しく鮮やかに描かれている。
 [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>近所の映画館で、ロメールの「レネットとミラベル　四つの冒険」というオムニバスを観た。<br />
主人公は十代の二人の少女。<br />
田舎っ子のレネットと都会っ子のミラベル。<br />
感受性豊かな二人の日常の冒険が、瑞々しく鮮やかに描かれている。<br />
その第一話「青の時間」は、バカンスで田舎を訪れたミラベルが<br />
レネットと出会い体験する二日間が、牧歌的な風景、美しい木漏れ日、<br />
森のざわめき、他愛もない会話の中で、ゆったりと経過してゆく。<br />
タイトルと対比するかのように、場面の所々に現れる赤が目を引く。<br />
赤い水バケツ、二人の赤いカーディガン、食卓の上の赤い果実&#8230;。<br />
その食卓でレネットがふいに語り出す「青の時間」の話。<br />
それは夜の生物が眠りにつき、昼間の生物が目覚めるまでの一瞬の間。<br />
その時世界は、青の沈黙に包まれる。<br />
あまりに短くデリケートな時間の為、それを体験しようと試みた二人も、<br />
一度は通り過ぎる車の音に邪魔をされ、敢えなく失敗する。<br />
翌日再挑戦の末、目の当たりにした青の時間は<br />
二人の白いリネンのネグリジェや、血の気の通ったつややかな肌をも<br />
青の世界にすっかり支配してしまった。<br />
<br />
その光景は、幼い頃見た怖い夢に少し似ていた。<br />
夢では夕刻、辺りは薄暗く嵐の到来を予感させた。<br />
人通りはなく、風だけがヒューヒューと吹き荒れる帰り道、<br />
私は恐ろしい現場を目撃する&#8230;。<br />
青一色のその夢は美しいとも言えるのだが、まだ記憶に生々しく、<br />
あまり思い出したくないので、これ以上は書かないでおこう。<br />
<br />
二人の少女が体験した、青の時間。<br />
その一瞬だけ、二人は可憐な少女でも、今時の若者でもなかった。<br />
<br />
そういえば“青年”と聞くと、若い男性だけをイメージしてしまうのは何故だろう。<br />
女性だって青年期はある筈なのに。<br />
ピカソの「青の時代」も三島の「青の時代」も、やはり男性のもの、と認識してしまう。<br />
何となく、時代は男性的で、時間は女性的なもの、のように感じる。<br />
男性は、小さな頃から乗り物や冒険を好むように、その時代を自ら運転し進んで行く。<br />
そして過去と未来の時代に思いを馳せ、語ろうとする。<br />
女性は、おままごとやお姫様ごっこの宝物を小箱に仕舞っておくように、<br />
嫁入り道具に箪笥を持って行くように、自分の中にいつも扉や引き出しを持っていて、<br />
時々それをそっと開ける時間がある。<br />
たとえ妻となっても母となっても、はたまた孫ができようと、<br />
そのひとときはきっと、何者でもない“私”になれる。<br />
リンドバーグ夫人も「海からの贈り物」の中で、その時間について綴っている。<br />
私がこうして、つたない文章を思い巡らす時間もまた、<br />
その引き出しを開けるひとときとなるのだろう。<br />
<br />
映画館から出ると、外は東京らしからぬ一面の雪景色で、<br />
私はまだ誰も踏み入れていない真っ白な地面に、<br />
そっと青い足跡を残しながら、ゆっくりと家路を歩いた。</p>
]]></content:encoded>
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		</item>
		<item>
		<title>マ・メール・ロワ</title>
		<link>http://www.maritakahashi.com/essay/485</link>
		<comments>http://www.maritakahashi.com/essay/485#comments</comments>
		<pubDate>Thu, 17 Mar 2011 11:37:44 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://www.maritakahashi.com/?p=485</guid>
		<description><![CDATA[とても怖い夢を見て、ベッドへ駆け込んで来た私の頭を撫でながら、
ママはこんなお話をしてくれた。

むかし、むかし
東の方にある王国がありました。
とても小さな国でしたが、人々はよく働き、よく笑い、よく歌い、
毎日喜びのか [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>とても怖い夢を見て、ベッドへ駆け込んで来た私の頭を撫でながら、<br />
ママはこんなお話をしてくれた。<br />
<br />
むかし、むかし<br />
東の方にある王国がありました。<br />
とても小さな国でしたが、人々はよく働き、よく笑い、よく歌い、<br />
毎日喜びのかけらを少しずつ、ミルクに浸して食べながら、<br />
幸せに暮らしておりました。<br />
王は民を深く愛し、民もまた王を愛していました。<br />
しかしある時王は病に倒れ、人々の祈り虚しく、暫く後に息を引き取りました。<br />
人々は嘆き悲しみ、そのあまりの悲痛から働く事も、笑う事も、食べる事も、<br />
何もかもできなくなってしまいました。<br />
歌の代わりに、しくしくとすすり泣く声ばかりがこだまし、<br />
その涙の深い海に、国全体が沈んでしまったかのようでした。<br />
そんな力を失った王国を狙って、まわりの大国が今にも攻めて来そうでした。<br />
ひとりぼっちの青年もまた、すっかり生気を失い、<br />
夜道をあてどなく、とぼとぼと歩いていました。<br />
街を見渡せる高台までやって来ると、青年はへたへたと座り込んでしまいました。<br />
その眼は涙でいっぱいで、溢れた涙はぽたりぽたりと地面へ落ち、<br />
やがて小さな水溜りになりました。<br />
涙涸れ、青年は俯いたまま、その水溜りに映る自分の顔を見て、ため息をつきました。<br />
ふと、水溜りの端に微かに揺れる光が見えたような気がして、<br />
青年は初めて顔を上げました。<br />
すると澄み切った夜空に、大きな満月が輝いていました。<br />
それはまるで、王の姿をあしらった金貨のように、きらきらと青年の顔を照らしていました。<br />
あまりに月が美しかったので、青年はすぐに街へ降りて行き、<br />
同じように泣いていた人々に、夜空を見上げるよう言って回りました。<br />
空を見上げる事さえ忘れていた人々は、久し振りで見上げた空に見事な月を見て、<br />
思わず微笑んで、声を上げ、手を叩いたり、口笛を吹いたり、<br />
隣の人と腕を組んで、歌ったり踊ったりしました。<br />
すっかり泣くのも忘れて&#8230;。<br />
青年は、その光景を暫く嬉しそうに見ていましたが、<br />
そのうちくるりと振り返り、もと来た道をまた歩き出しました。<br />
今度はまっすぐ前を向いて、確かな足取りで。<br />
高台に着くと、青年は崖に立つ白い岩に、持っていたナイフで何か刻み始めました。<br />
それは失いかけたこの想いを、いつまでも忘れない為でした。<br />
月がそれを、静かに照らしていました。<br />
<br />
「これがその時刻んだ文字よ。」<br />
そう言って、ママは私の小さな掌いっぱいに、指でゆっくり<br />
“望”<br />
と書いた。<br />
そうして、ママの柔らかな手で私の手を包み込み、<br />
優しく「おやすみ」と言った。<br />
ママの温もりと月の光に見守られて、<br />
私の瞼は静かに、眠りの園へと下りて行った。</p>
]]></content:encoded>
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		</item>
		<item>
		<title>Nothing from Nothing</title>
		<link>http://www.maritakahashi.com/essay/475</link>
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		<pubDate>Fri, 26 Nov 2010 14:55:14 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

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		<description><![CDATA[不思議と“ない”という響きに、そっと寄り添う数日だった。
参加させて頂いている季刊小冊子に、今回はどんな事を書こうか考えていて、
浮かんだエピソードが、ある美術館で観た奇妙な展覧会。
そのタイトルは「Rien de Ri [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>不思議と“ない”という響きに、そっと寄り添う数日だった。<br />
参加させて頂いている季刊小冊子に、今回はどんな事を書こうか考えていて、<br />
浮かんだエピソードが、ある美術館で観た奇妙な展覧会。<br />
そのタイトルは「Rien de Rien」「何もない」だった。<br />
同じ頃、無性に「僕らのミライへ逆回転」という映画を観たくなり、<br />
あのノリの良いテーマソングは何と言っただろう？と思い調べると、<br />
意外にも「Nothing from Nothing」なんて冷めたタイトルが付いていた。<br />
Billy Prestonが歌うその曲は底抜けに明るくて、それが少し切なさを誘った。<br />
周りには沢山の物や人、情報が絶えず溢れ行き交い、<br />
時々すべてがごちゃ混ぜになって、一つ一つの輪郭が見えなくなる。<br />
それはまるでドロドロした未完成の巨神兵が迫って来るようで、<br />
思わず後退りしてしまう。<br />
そうして群れから逸れ、気付けばぽつんと一人。<br />
誰もいない。何もない。<br />
あるのはその“ない”という存在感だけ。<br />
それは心に、じわじわと、ひしひしと、沁みてくる。<br />
そこにあるもの以上に深く&#8230;。<br />
そのがらんとした孤独に泣きたいような、でももう暫く<br />
孤独という名の静寂の中で、漂っていたいような気持ちになり、<br />
一人外へ出た。<br />
大通りを避けて一本入った裏道の、ビルとビルの間に、<br />
ぽっかりと空いた一区画があった。<br />
少し前に取り壊されたビルの敷地が、何も建たずビルの形そのままに、<br />
四角い更地になっていたのだ。<br />
同じようなビル群が犇めき合う中で、歯が一本抜けた跡のようなそのスペースに、<br />
どこまでも高い秋空から、柔らかな光が射していた。<br />
長いことコンクリートの下で眠っていたであろう、茶色い土の絨毯が顔を覗かせ、<br />
そこから芽吹いた雑草たちが、その光を浴びてきらきらと、<br />
気持ち良さそうに揺れている。<br />
私はその時、無は光なのかもしれない、と思った。<br />
今まで、無は闇で、ある事が光、と無意識にイメージしていた。<br />
けれどひょっとして、無という光があるものの面影を照らし、<br />
その時初めて、私達はその存在に気付くのかもしれない。<br />
希望は、ないところにしか生まれないように&#8230;。<br />
もうじき紅や黄に染まった木の葉も落ちて、しんしんと冬がやって来る。<br />
すっかり何もなくなった裸の枝を、空に広げ立っている街路樹の通りを<br />
「Nothing from Nothing」なんて口ずさみながら、歩いて行こう。</p>
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		<title>アメリカ</title>
		<link>http://www.maritakahashi.com/essay/454</link>
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		<pubDate>Fri, 13 Aug 2010 15:30:49 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

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		<description><![CDATA[小さい頃 アメリカ は　週末父の決まり文句
「どこへ行くの？」　「…アメリカ！」

小さい頃 アメリカ は　つまりは沢山歩かされる事
父特製弾丸おにぎりと　身欠き鰊と胡瓜に味噌　リュックに詰めて

小さい頃　アメリカ　は [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>小さい頃 アメリカ は　週末父の決まり文句<br />
「どこへ行くの？」　「…アメリカ！」<br />
<br />
小さい頃 アメリカ は　つまりは沢山歩かされる事<br />
父特製弾丸おにぎりと　身欠き鰊と胡瓜に味噌　リュックに詰めて<br />
<br />
小さい頃　アメリカ　は　海を越えない　日帰り旅行<br />
近くて遠い　遠くて近い　未知の旅<br />
<br />
小さい頃　アメリカ　は　帰りはいつも　センチメンタル<br />
夕焼け色の我が家が見えれば　魔法は解けて　冒険は終わる<br />
<br />
小さい頃　アメリカ　の　その響きが　何処となく　好きでした　</p>
]]></content:encoded>
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		<title>さかさまの国</title>
		<link>http://www.maritakahashi.com/essay/440</link>
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		<pubDate>Wed, 07 Jul 2010 13:42:16 +0000</pubDate>
		<dc:creator>SYM</dc:creator>
				<category><![CDATA[The little match episode]]></category>

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		<description><![CDATA[はじまりは“溺れる魚”だった。
誰かにメールで伝えた本のタイトル。
実際は魚違いで、それは別の本のものだった。
慌てて訂正すると、送った相手から
「ところで、溺れる魚って面白いですね。」
と返ってきた。
気にも止めなかっ [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p>はじまりは“溺れる魚”だった。<br />
誰かにメールで伝えた本のタイトル。<br />
実際は魚違いで、それは別の本のものだった。<br />
慌てて訂正すると、送った相手から<br />
「ところで、溺れる魚って面白いですね。」<br />
と返ってきた。<br />
気にも止めなかったが、確かに“魚が溺れる”なんて…。<br />
その様を思い浮かべると、何とも奇妙で、滑稽で、<br />
“溺れる魚”という言葉が何かの力を得た呪文のようにも思えた。<br />
「溺れる魚」という本を私は読んだ事が無く、その内容も知らない。<br />
けれどどこかで目にしたその文字の連なり、耳にした響きの網に、<br />
無意識の内に引き寄せられていたのだろう。<br />
そういえば、アキ・カウリスマキの映画に“真夜中の虹”という邦題の<br />
作品があった。<br />
それだってよく考えれば可笑しな話だが、皆が寝静まった丑三つ時、<br />
夜空に七色の橋がうっすらと浮かび上がる光景は、<br />
きっと言葉にならぬ美しさだろう。<br />
<br />
そうして、まるで童歌でも口ずさむように、道を歩きながら、<br />
電車に揺られながら、窓越しにぼんやり外を眺めながら、<br />
私はその言葉の綾取りに夢中になっていった。<br />
<br />
やわらかな石<br />
ほかほかの氷<br />
バタ足する蝶<br />
ひとりぼっちのパレード<br />
雪の砂漠<br />
底なし丘<br />
空の端<br />
音の香り<br />
まばゆい影<br />
朝の闇<br />
懐かしい未来<br />
永遠の刹那<br />
…<br />
<br />
新しいフレーズが思い浮かぶ度に、それは息づき、歩き出し、<br />
平面を飛び出して、庭となり、村となり、町となり、<br />
やがて一つの小さな国が創られていくようだった。<br />
そう、湖の鏡に映る“さかさまの国”のような…。<br />
<br />
それから暫くして、その熱はすっと冷めた。<br />
けれど、その“さかさまの国”で、今度は私によく似た天邪鬼が<br />
言葉の綾取り遊びをしているような、そんな気がふとする時がある。<br />
その時、きっと彼女の“さかさまの国”で、私は目を覚ます。</p>
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